第1回YNU日本語スピーチ大会(2011年)テーマ「私の見つけた日本」
はじめに
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留学生を招くこと、留学をしてもらうことは、国策になっており、大学としても大切な戦略の一つとして位置づけられています。理由は何かと言えば、グルーバル化の時勢、故という言葉が返ってきそうな気もしますが、より具体的には何なんでしょうか。
世界の中で横浜国大が活躍するために、卒業生がスムーズに活躍するために、語学教育、異文化共生理解等々、言われていることはご承知の通りです。
今回行われたスピーチコンテストの課題は「私の見つけた日本」ですが、スピーチを聞いていると、言葉の巧みさには頭が下がる一方で、日常として忘れていた、あるいは見逃していたことが、大きな発見として紹介されておりました。留学生スピーチにありがちな日本礼賛の気配は少なく、違いを楽しんでいる雰囲気が見えました。実はこれこそが、違いを大切にともに歩もうとする我々の留学生教育の成果が見え、非常に感動いたしました。
今回は全学的な催しとして初めてのものと聞いておりますが、是非次回も、多くの、かつ多様な参加者を得、また、多くの聴衆に聞いていただき、ともに楽しめるスピーチ大会としての発展への応援、サポートをお願いしたいと考えておりす。
末尾になりましたが、実行委員会の努力、苦心は大きなものだったと聞いております。また、読売新聞社をはじめとして学外からも、ご支援をいただきました。ここに、御礼申し上げ、開催チームに賛辞を送りたいと思います。また、皆様からも、スピーチ大会をよりよきものとするためのご支援、助言をいただけたら、大学としてもこの上ない喜びでございます。
山田 均(副学長 本大会審査員)
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2011年10月29日(土)のホームカミングデーにおいて、留学生センター主催で「YNUスピーチ大会2011」が開催されました。本年度のテーマは「私の見つけた日本」。本学の教職員以外にも、本学OB、市民ボランティア、近隣の一般市民、出場者の家族や友人達、約80名が留学生のスピーチに耳を傾けました。
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報 告
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6月に学内で募集をしたところ、予想を超える応募があり、書類選考を経て、初中級の部5名、上級の部5名、合計10名の出場者が決定しました。出場留学生の身分は、学部生、大学院生、研究生とさまざまです。学部生は、入学時に日本人学生と同等の日本語力が求められます。一方、大学院生の中には、研究上日本語を必要としないケースも少なからずありますが、日本語や日本文化を知ることの重要性を痛感している彼らは、多忙な中、時間をやりくりし、日本語学習に励んでいます。この日、さまざまな背景を持つ留学生が、それぞれの環境で身に尽けた日本語を使い、それぞれの思いを日本語で語ってくれました。
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スピーチはホームカミングデーのプログラムの関係上、1時間半という枠の制限があり、 発表者のもち時間は1人3分でした。短いこの持ち時間と上限のパワーポイント4枚を効果的に用いて、視覚的にも聴衆を大いに楽しませてくれました。発表のあとの教員からの質問にも堂々と答えました。質問は日本語教育部門の四方田教授、小川教授、丸山准教授、奥野准教授の4名が担当しました。
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内容は、日本での些細な日常生活から気づいた、朝のラジオ体操、ラーメン屋の行列、毎日の通学、アルバイトを通して考えたことや、自国との比較、日本での入院や震災でのボランティア経験、震災経験で知った日本人の対応など、さまざまでした。普段、留学生と接することのない、ある市民の方は「留学生が普段このようなことを思い、生活していることを初めて知った。それをこうして日本語で話しているのを見てすごいと思った。」と感想を寄せてくださいました。
また審査の間には、ショートプログラムで滞在している華東師範大学の5名による、この1週間の滞在中に「私の見つけた日本」について成果発表がなされました。3年生からは「お年寄りの多様な老後生活」、4年生からは「日本人の集団性について」と題し、発表があり、会場を湧かせました。その後、会場からは、この成果発表やスピーチに対する質問やコメントが多く寄せられ、審査中も終始活気あふれる様子でした。
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来場者質問:「日本人のいい面を話してくれたが、嫌な面について教えてください」 応答1:「日本人は人が付き合うときに心を表さないことがあります。」 応答2:「察しの文化が嫌です。人の心を読んで当たり前とされると困ります。」 来場者コメント:「ふらっと来たけれど、来て良かったです。たった3分間でどうやって感動させるのか、教えて頂きたい。」 来場者コメント:「緊張している中でも堂々と自分の思いを伝えているのが素晴しかった。地震のこと、不安なこと、つらいことを含め自分のものにした上で、日本をほめちぎっていただき有難かったです。つらいこともあるけれど、日本の滞在を楽しんでください。」
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来場者のコメント
「日本語スピーチ大会」が単に“日本語の成果発表”ではないことは当日参加した人が皆感じたことと思う。留学生にとっては自分の思いを伝える場であり、参加者にとっては留学生の目を通して日本を見つめなおす契機であった。教育文化ホールの中集会室をほぼ埋めた参加者、終了時間一杯までの質問、熱い感想表明がそれを雄弁に物語っていた。
山川隆様(富丘会 広報委員 47年経済卒業)
審査は、どのスピーチも工夫がほどこされ、非常に困難な過程でありましたが、4つの項目(内容、スピーチとしてのまとまり、日本語、質疑応答)の評価に基づいた厳正な審査の結果、最優秀賞、各部門の優秀賞、読売新聞社賞、敢闘賞の5つの賞が選ばれました。
[審査員] 1. 山田 均 (副学長)
2. 宮武 久佳 (国際戦略コーディネーター)
3. アンドラディ 久美 (経営学部インターナショナルオフィス室長)
4. 伊藤 陽子 (国際課長)
5. 長原 敏夫 (読売新聞東京本社横浜支局長)
6. 徐 敏民 (華東師範大学日本語教育センター主任:本学卒業留学生)
7. 大野 茂 (国大ボランティア:公開講座『日本語で国際交流』受講)
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審査の結果は次の通りとなりました。 最優秀賞 朴チョロン(パク チョロン)教育人間科学部学部生・韓国 「ラーメン屋の前の行列から見つけた日本」 読売新聞社賞 劉穎菲(リュウ エイヒ) 「小さな日本・大きな日本」 優秀賞(初中級)Yin Minn Papa(イェン ミン パパ)国際社会科学研究科大学院生・ミャンマー 「私が毎日見る日本人」 同 (上級) 徐申麗(ジョ シンレイ)経済学部学部生・中国 「幸せになるための魔法の言葉」 敢闘賞 Neylor Stevo(ネイロル エステボ)環境情報学府研究生・ブラジル 「目に見た以上のもの、日本」
出場者のコメント
本当にスピーチ大会に参加することができ、自分の功績にもなり、とても嬉しく思っています。 今回のイベントは、細部に渡って完璧で、そして非常によく準備されアナウンスされていました。 又、同じ思いを共有する新しい人に会い、私の視野を広げることができました。確かに、これは貴重な機会で私の世界を豊かにしてくれました。 このイベントの後すぐに、次のイベントに登録したい気持ちになりました。 日本の文化に自分を統合する新しい方法を探し続けることはいっそうのやる気を起こさせてくれます。
I really liked to participate in the contest and I was also very happy with my achievement. Besides the event being impeccable in every detail, and very well organized and announced, it also served as a way to meet newpeople who shared the same affinities and then broaden my horizons. Surely, this was a unique opportunity to enrich my world. After this event, I feeleven more motivated to enroll in the next events and continue exploring new ways to integrate myself more on the Japanese culture.
ネイロル エステボ(環境情報学府研究生・ブラジル)
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その後、審査員から受賞理由が述べられ、賞品が渡されました。賞品は大理石やクリスタルのYNUモニュメントのミニチュア、読売新聞社の盾など豪華なものでした。また日本の卒業生から全員に奨励賞が送られました。最優秀賞に選ばれた朴チョロンさんは、後の交流会で、学長から大きなトロフィーが授与されました。 発表者の中には終わってすぐ、来年はもっとペラペラになってまた出たいと抱負を語ってくれた留学生もいました。この経験を生かしてさらに日本語にも磨きをかけてくれることでしょう。
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横浜国立大学には世界各国からの留学生が、色々な思いを抱いて留学してきています。今回の企画が、そのような留学生を知っていただき、理解していただく良い機会になったのであれば、幸いです。
留学生センター
[スピーチ大会実行委員]
1.小川誉子美 (留学生センター教授)
2.奥野由紀子 (留学生センター准教授)
3.四方田千恵 (留学生センター教授)
4.丸山 千歌 (留学生センター准教授)
5.功刀 祥子 (留学交流・センター係)
6.宮島 由紀 (留学交流・センター係)
(担当:留学生センター)