YNU日本語スピーチ大会2012テーマ「今の○○に伝えたいこと」
はじめに
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YNU日本語スピーチ大会2012は、グローバル化、国際共生のあり方を具現化したイベントであると言えるでしょう。異文化に触れる。未知なるものへ不安を覚え、それを乗り越えようと挑む。その強烈な体験をメッセージにする。その試みを異文化の人が支援する。このようなダイナミックな活動がこのコンテストに凝縮され、また、そこに至るまでの濃密な過程が浮かび上がってきます。
今年の課題は「今__に伝えたいこと」でした。スピーチの内容は多岐にわたっていましたが、笑いあり、ユーモアあり、風刺あり、そして惚気(のろけ)ありと、聴衆はいずれのスピーチにもいつの間にかグイグイと引き込まれていました。大いに緊張しながらも元気よく話すスピーカーに、留学生たちは自己の姿を投影し、日本人たちは新鮮かつ真っ当な見解に感心したに違いありません。
スピーチ大会には珍しく、パワーポイントのスライドを使いながらのプレゼンのようなスピーチとなっていてたいへんユニークなコンテストです。参加者10名の出身国も様々で、学部生、院生、研究生、短期留学生、教員研修生等バラエティに富んでいました。国際性・開放性を標榜する本学らしさが表れていました。主役であったスピーカーの背後には、指導にあたられた教員、応援・サポートを惜しまなかった留学生と日本人学生、労を厭わず汗を流した実行委員会メンバー、そして当日の素晴らしい聴衆の存在があり、そこに関わったすべての人たちの一体感を感じずにはいられませんでした。個人的には教員としてこのようなスピーチ指導もしてみたいと思ったものです。
末筆となりますが、YNU日本語スピーチ大会には読売新聞社、卒業生の方々をはじめとして学外からもご協力・ご支援を賜っております。ここに御礼申し上げます。今後とも益々のお力添え・ご助言を頂戴できますれば幸いでございます。
小林 正佳(留学生センター長 本大会審査員)
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報 告
2012年10月27日(土)のホームカミングデーにおいて、留学生センター主催で「YNUスピーチ大会2012」が開催されました。本年度のテーマは「今~に伝えたいこと」。本学の教職員、日本人学生以外にも、本学OB、市民ボランティア、出場者の友人達、約100名が留学生のスピーチに耳を傾けました。
6月に学内で募集、書類選考を経て、初中級の部5名、上級の部5名、合計10名(うち9名女性、1名男性)が壇上で発表しました。7か国からの出場留学生の身分は、学部生、大学院生、研究生、交換留学生とさまざまです。この日、彼らは、それぞれの環境で身に付けた日本語を使い、熱い思いを託したメッセージを語ってくれました。
発表者の持ち時間は1人3分でした。短いこの持ち時間とパワーポイント上限4枚を効果的に用いて、視覚的にも聴衆を大いに楽しませてくれました。発表後のの教員からの質問にも堂々と答えました。質問は日本語教育部門の四方田教授、小川教授、奥野准教授の3名が担当しました。
発表者は、日本人、母国の友人、20年後の自分に伝えたいことをさまざまな角度から主張しました。日本の慣習、留学生活、宗教、社会問題などの話題に観衆は興味深く聞き入りました。
また審査の間には、ショートプログラムで滞在している華東師範大学の7名による、成果発表がなされました。「今日本人に伝えたいこと」というテーマで、日本語第二専攻(新規受け入れ)の宋李娜さん、江師雁さんによる「中国方言の面白さ」、日本語主専攻3年生の于京澤さん、朱樹文さんによる「中日の大学生の部活動について」、日本語主専攻4年生の銭添さん、張鹆さん、趙呈穎さんによる「中国における日本語学科の大学生活」の発表がありました。 その後、門倉教授からの講評と、華東師範大学の横浜国立大学OBである徐敏民教授のショートプログラムの紹介がなされました。 今回は日中関係が危ぶまれる中でのショートプログラムでしたが、会場からは、日本から中国へショートビジットで今夏訪れた日本人学生などからも質問や人と人との交流の大切さを語るコメントが相次ぎました。
コンテスト参加者も壇上にあがり、最後は全員に対する質問がなされ、審査中も終始活気に満ちていました。
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審査結果
審査は、どのスピーチも工夫がほどこされ、非常に困難な過程でありましたが、4つの項目(内容、スピーチとしてのまとまり、日本語、質疑応答)の評価に基づいた審査の結果、最優秀賞、各部門の優秀賞、読売新聞社賞の4つの賞が選ばれました。尚、全員に奨励賞・参加賞が贈られました。
受賞者
受賞者は以下の通りです。
最優秀賞 Simi Thambi(シミ タンビ) 国際社会科学研究科・インド
「今日本の女性に伝えたいこと―自信を持って、目標を高く―」
読売新聞社賞 具 仁謨(グ インモ) 教育人間科学部・韓国
「今 未来の自分に伝えたいこと―20年後の自分―」
優秀賞(初中級)Onogwu Ugah Elizabeth(オノグ ウガ エリザベス) 都市イノベーション学府・ナイジェリア
「日本人の宗教観に伝えたいこと―日本社会での宗教の位置―」
同 (上級) Rachel Pierce(レイチェル ピアス) 経営学部・オーストラリア
「今日本人に伝えたいこと―日本の捕鯨は本当に必要でしょうか―」
奨励賞 全員
審査員からのコメント
[審査員]
【学外】
塚田 牧男 (読売新聞東京本社横浜支局長)
徐 敏民 (華東師範大学日本語教育センター主任:本学卒業留学生)
坂本 健 (三井ボランテイアーネットワーク)
【学内】
小林 正佳 (留学生センター長)
鈴木 雅久 (国際戦略推進室国際コーディネーター)
松川 誠司 (学務部長)
[コメント]
今回の発表会に登壇した留学生は、17人の内一人だけが男性でした。学内におけるスピーチコンテストとはいえ、これほど女性の進出を目の当たりにしたことはなかったことでしょう。また、発表を聞いてみると、留学生の方が、気持ちを伝えるのは日本人学生より上手なのではないかと思いさせられました。世の中の男性諸君!日本人学生の皆さん!入賞した方や登壇したすべての方を見本に、是非頑張ってください。
こんな貴重な体験をさせて頂き、関係者の皆様に感謝を申し上げます。また、読売新聞横浜支局と卒業生の坂本健様にはご協賛をいただき、誠にありがとうございました。この場をお借りして、お礼を申し上げます。
横浜国立大学・国際戦略推進室 鈴木 雅久
Out of 17 speakers in this Japanese speech contest, there was only one male student. How remarkable to see this unprecedented wave of participation by women, even in a simple campus speech contest. The speeches we heard also made us believe that foreign students are better at expressing their feelings than local Japanese students. We have to wonder why! Maybe we would have to say “Gentlemen! Japanese students! You really should face more challenges and aim higher! For your own future improvement you can learn from the positive attitude and passion of these prizewinners and indeed all active participants in this speech contest.” The opportunities provided by this contest were invaluable, and I would like to express our appreciation to the staff and organizers. On behalf of YNU, our special thanks go to Yomiuri Shinbun (Yokohama branch) and Mr. Ken Sakamoto of YNU Alumni for their support and sponsorship of this event.
Masahisa Mabo SUZUKI (YNU International Affairs)
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コンテスト出場者の日本語は全員判り易く、初中級でも違和感なく聞けました。出場者の出身国は漢字を使わない国が多数でありましたが、それにしては日本語が上手でした。最優秀賞のインド人女子留学生の発表は、テーマ・発表内容共に優れていて、最優秀賞にふさわしい発表であったと思います。日本語能力に限って言えば、はるかに優れていると思われる出場者もいましたが、彼女のスピーチにはそれを上回る説得力を感じました。 賞品授与式の際の留学生の反応は賑やかで盛り上がっていました。これも出身国が多岐にわたっていた為かとも思われます。又最後の日本人を含む聴衆(学生)からの出場者及び華東師範大(特別発表)に対する質疑応答も活発で興味深いものでした。これが可能になった理由の一つは、大きな会場を確保できたことであると考えられます。同時に予選も含めた参加学生の努力、日本語指導に当たられた先生方の御尽力を忘れてはならないと思います。 来年以降ももっと多数が出場、或いは見学し、このコンテストが更に盛り上がることを願っています。
蛇足 1960年の卒業生(経済学部)として当時を振り返ると、留学生ましてや日本人女子学生も殆ど見当たらず、このように国際化してきた国大には隔世の感が有ります(日本と云う国自身も同じですが)。(当時国大は学芸学部―現教育人間科学部 鎌倉、工学部 弘明寺、経済学部-現経済学部・経営学部 南太田と各学部の所在地が別々になっていました。)
三井ボランテイアーネットワーク 坂本 健 (1960年経済学部卒)
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日本語のレベルは経験年数によって差がありますが、どの留学生も大勢の聴衆の前で物怖じせず、堂々と発表している姿には本当に感心します。今回は、異文化体験を踏まえた上で、あるテーマについて自分自身の主張をしっかり述べているスピーチが目に付きました。そういった内容のものが高く評価されていたように思います。「日本語のスピーチ」から「日本語でのスピーチ」へと、進化を感じさせてくれる大会でした。
松川 誠司(学務部長)
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日本語教育を進展し、各国若者同士の交流を深めるために行われた今スピーチコンテストは成功裏に終え、おめでとうございます。今回のショートプログラムを通して学生の視野が広げられ、日本への理解も深められたと思います。このような交流が両国の親善友好に寄与できるよう、期待してやみません。
華東師範大学 徐敏民
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発表者のコメント
日本語スピーチコンテストは、私の日本語の弁論法技能を高めるための優れたプラットフォームだったと思います。1年前に日本に来たとき、私の日本語は、スピーチコンテストに参加すること、ましてや優勝することなど考えられないほど、貧しいものだったのですが、留学生センターで一年間日本語を勉強したことが本当にたくさん助けとなりました。語学力の向上のために、ご指導くださった留学生センターの先生方に本当に感謝しています。スピーチコンテストではまた、ほかの多くの留学生参加者の発表を聞くことができ、いい経験になりました。本当にこのイベントに参加して楽しかったです。将来より多くの留学生がこのイベントに参加することを願っています。
The Japanese speech contest provided an excellent platform to boost my confidence in Japanese elocution skills. When I first came to Japan 1 year ago, my Japanese was so poor that I couldn’t think of participating in a Japanese speech contest let alone winning it, but one year of studying Japanese at International Student Centre really helped me a lot. I owe immense gratitude to the teachers at International Student Centre who have contributed greatly towards the improvement of my language proficiency. The speech contest also provided a unique opportunity to listen to the views expressed by participants from many countries. I really enjoyed participating in this event and hope more and more foreign students participate in this event in the coming years.
Simi Thambi(シミタンビ) 国際社会科学研究科・インド
会場からのコメント
日本語の習熟度別に「初中級の部」と「上級の部」と設定されていたこそいたものの、どの発表者にも、日本語で聴衆に伝えようとする熱心な姿勢が窺えたのが印象的であった。同時に、発表者個人が日本や日本人に対して着目した点や考えた事を知る良い機会となった。グローバル化が急激に進捗する今だからこそ、また日本と近隣諸外国の関係が緊張の様相を呈す今だからこそ、国家間の政治的な思惑等にかかわりなく、個人の実生活や体験に基づく具体性を伴ったメッセージを理解し考え合う事の意味は、極めて大きいと感じている。発表者は「日本語『を』話していた」というよりも「日本語『で』話していた」というべきかも知れない、内容の濃い2時間だったと思う。
教育人間科学部・学校教育課程3年 江藤洋輔
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授賞式では、審査員から受賞理由が述べられ、賞品が渡されました。賞品は大理石やクリスタルのYNUモニュメントのミニチュア、読売新聞社の盾など豪華なものでした。また三井ボランテイアーネットワーク 坂本 健様から全員に奨励賞が送られました。最優秀賞に選ばれたシミタンビさんには、鈴木 雅久教授から大きなトロフィーが授与されました。 華東師範大学の7名には、書籍(本学経済学部卒業生塚越さんより、寄贈された『国際結婚一年生』塚越悦子著 主婦の友社 等)が贈られました。 昨今の領土問題等をめぐる報道や情報が渦巻く中、今日ほど、異なる考え方や見方に互いが謙虚になる必要を実感し、草の根交流が重要性が注目される日々はないかもしれません。日本人学生の参加が増え、質疑が活気を帯びたことは、喜ばしいことでした。
本学の留学生センターは、1992年に発足し、今年20周年を迎えました。当初とは、受け入れ態勢も改良されつつありますが、今後、新しい時代にふさわしい魅力あるキャンパス作りを発展させていくためには、多方面からの知恵が必要です。皆様からのご意見をいただければ幸いです。
横浜国立大学留学生センター
[スピーチ大会実行委員]
小川誉子美 (留学生センター教授)
奥野由紀子 (留学生センター准教授)
四方田千恵 (留学生センター教授)
栗原 淳 (留学交流・センター係)
宮島 由紀 (留学交流・センター係)